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　長崎原爆の被爆者を親に持つ被爆2世26人（うち1人死亡）が、2世に被爆者援護法を適用しないのは憲法違反だとして1人10万円の国家賠償を求めた訴訟の判決が12日、長崎地裁（天川博義裁判長）で言い渡される。原爆放射線の遺伝的影響を巡る集団訴訟の初の判決。がんなどの健康不安を抱える2世は「親の被ばくの遺伝的影響は否定できない」と訴えているが、国の対策は乏しく、地裁の判断が注目される。

　原告は長崎、福岡、大阪、広島の4府県に住む男女で、最年長は長崎への原爆投下（1945年8月9日）から1年4カ月後の46年12月生まれの75歳。最年少は67年生まれの55歳。

　被爆2世を巡っては、被爆後の間もない時期から、被爆者らの間で子供への遺伝的影響を懸念する声が上がっていた。88年に発足した原告の母体「全国被爆二世団体連絡協議会」（全国二世協）は、国に立法措置を講じて被爆2世に医療費支給などの援護をするよう求めてきた。

　しかし、国は日米共同研究機関「放射線影響研究所」（放影研）による2世の調査結果などを踏まえ「親の放射線被ばくによる次世代への遺伝性影響は確認されていない」と主張。79年に2世を対象にした健康診断を始めたが、2世が不安視するがんの検診は含んでいない。

　2世らは2017年2月、広島、長崎両地裁でそれぞれ提訴。被爆者への医療援護などを定めた被爆者援護法の対象に2世を加えない立法不作為は、幸福追求権や法の下の平等を定めた憲法に違反すると主張している。

　訴訟の最大の争点は、原爆放射線の遺伝的影響を巡る考え方だ。原告側は「動物に放射線の遺伝的影響が生じることはマウスなどの実験で科学的に証明されており、2世が親の被ばくの影響を受けた可能性は否定できない」と主張。一方、国側は「マウスの実験結果をそのままヒトに適用することはできない」などと反論する。

　加えて、遺伝的影響の立証がどの程度必要かも争点になっている。国側は「影響が生じることを科学的知見に基づき、高度の蓋然（がいぜん）性をもって立証すべきだ」と主張。原告側は、広島原爆の「黒い雨」訴訟の広島高裁判決（21年7月）が原爆放射線による「健康被害の可能性」を認めて、原告84人全員を被爆者援護法上の被爆者と認めたことを踏まえ「2世も遺伝的影響の可能性が科学的に示されている以上、援護法の適用対象とすべきだ」と訴える。

　原告たちは、今回の長崎地裁判決と23年2月に予定される広島地裁判決を足がかりに、国に2世の援護を迫る考え。両親が長崎で被爆し全国二世協会長も務める崎山昇原告団長（64）は「国が起こした戦争の結果、親たちが被爆し、2世が健康不安を抱えている。国は2世を援護する責任をしっかりと負うべきだ」と語る。【高橋広之】

被爆2世

　法的な定義はないが、厚生労働省が実施する被爆2世健康診断の対象は、父母のいずれかが被爆者で広島原爆では1946年6月1日以降、長崎では同4日以降に出生した人とされている。国はがん検診を含まない健康診断を無料で実施。国は2世の人数を把握しておらず、全国被爆二世団体連絡協議会は30万～50万人と推計している。