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　国の特別天然記念物・タンチョウが11月、高病原性の鳥インフルエンザに感染して北海道釧路市音別町で見つかった問題で、保護されて治療中の幼鳥（雄）の右脚に個体識別用の環境省の足環（あしわ）「15B433」が装着されていたことが27日に判明した。結果的に感染は拡大しなかったものの、きょうだいの幼鳥雌にも足環が着けられており、この雌の足環から一家の動向を追跡することも可能だった。「感染を最小限にとどめることができたが……」と関係者は残念がった。

　標識調査を委託されているNPO法人「タンチョウ保護研究グループ」によると、6月26日、豊頃町久保川二宮東で足環を装着。同時期に生まれた雌にも「15B432」の足環が装着されていた。両親に足環は装着されていないが、雌の幼鳥と行動を共にしており、一家の行動は把握が可能で感染拡大防止のために捕獲することも不可能ではなかった。

　治療を受けている雄は、11月20日に釧路市音別町の河畔で衰弱しているところを保護され、翌21日に簡易検査でA型鳥インフルエンザの陽性と判明。国立環境研究所（茨城県つくば市）の遺伝子検査で11月28日、感染力の強い高病原性の鳥インフルエンザ陽性（H5亜型）と確定した。

　環境省と道は「野鳥監視重点区域」に指定した半径10キロ以内の巡視を強化、死がいや衰弱個体を発見した場合は速やかに回収する方針を示したが、報道も含めた関係機関に「足環は着いていない」と発表した。

　養鶏場などで鳥インフルエンザが発生した場合は「家畜伝染病予防法」によって農場で飼われている鶏は「全て殺処分する」と定められているが、野鳥の場合、感染拡大を抑制しようにも、鹿児島県出水市で今冬感染が大量に確認されているナベヅルのように、死がいを回収する程度のことしかできない。

　タンチョウ保護研究グループの百瀬邦和理事長（71）は「人間でいえば家族は濃厚接触者。せっかく足環が着いていたのだから、簡易検査で陽性が出た段階で大捜索すべきだった」と悔やむ。環境省釧路自然環境事務所の川越久史所長は毎日新聞の取材に対し、「職員が聞き取った『収容処理簿』に足環についての記載がなく、チェックが甘かった」と釈明。「今後は、リング（足環）情報もきちんと共有し、感染拡大を抑えたい」と話した。【本間浩昭】